田村文宏展 ─この、うつくしき、焼きもの。─ を開催いたします
うつわ祥見KAMAKURA 扇ヶ谷では、この度、愛知県岡崎市にて作陶する陶芸家・田村文宏の個展 ─この、うつくしき、焼きもの。─ を開催いたします。
田村文宏は日本、東南アジア、中国で作られた中世の焼きものに興味を持ち、愛知県周辺の原料を使い制作を続けています。瀬戸、美濃周辺の焼きものは、中世に大陸から技術的、美術的にも影響を受け発展を遂げてきました。
時代が遡るにつれて形や用途、原料の使い方に変化がみられ、なぜ自分が中世のものに惹かれるのか、うつわを作りながら理解しようとしていると語ります。
古いうつわを手にすると、当時の息づかいや技術など、時間や国境問わず感じられるものですが、だからこそ、現在の作り手として、より誠実にうつわを作らなくては、と田村は感じています。
岡崎市は愛知のなかでも、瀬戸や美濃のような焼きものの産地ではありませんが、田村は生まれ育った岡崎で、何より土作りに多くの時間を費やしています。そのため彼の作風は多様で、土との出会いがその作風を決める。ある意味、昔ながらのやり方で焼きものを作っている陶芸家のひとりです。その仕事にはひとりの孤独な作業が続きます。以前そのことを尋ねたとき彼は、「古い焼きものを見るとそこに自分と同じように、ひたすら焼きものを作り続けた人々を感じる。陶工たちの姿を想うと、自分は彼らの一部だと感じることができる。だから焼きものを作ることは孤独ではないのです」と答えました。
田村の作品に思うのは、単一な言葉で言い表すことのできない、複雑さです。見えている以上の複雑さと言ってもいい。そこに宿る美しさに惹かれます。そして、そばにおいてみたいという衝動が湧き上がる。彼の焼きものは等しく謎めいていて、神秘的な魅力があるのです。かつて、青木亮氏の焼きものに出会ったとき、根源的な心の問いが生まれたことがあります。なぜ、うつわに惹かれるのか。なぜこのうつわを美しいと感じるのか。答えはまだ見つかりません。
焼きものとは手が届いたかと思うと遠ざかる。かなた先にある地平線のように近く行けば遠ざかる。だからこそ一生かけて追い求めていく価値があるものかもしれません。
本展において、田村文宏が、いま作り出す、焼きものを感じていただければと願います。
うつわ祥 見KAMAKURA 祥見知生
田村文宏 Fumihiro Tamura
1978年、愛知県生まれ。2004年、愛知県立瀬戸窯業高等学校陶芸専攻科卒業。
ホンジュラス共和国やカンボジアにて窯業サポートなどのキャリアを重ね、愛知県岡崎市に築窯。
穏やかで素朴な作風で、古陶に通じる美しさのあるうつわを作る。
田村文宏 この、うつくしき、焼きもの。
会期:2025年5月10日(土)〜5月18日(日)
作家在廊日:5月10日(土)
会期中休:5月13日(火)
会場:うつわ祥見KAMAKURA 扇ヶ谷
住所:神奈川県鎌倉市扇ガ谷2丁目13-2(JR横須賀線鎌倉駅西口下車 徒歩13分)
地図:Google Map
電話:0467-53-8933
営業時間:12時〜18時(展覧会開催期間以外は不定休)
写真 大社優子